全体
知性や物理的な力を象徴するスートです。
知性と暴力は一見正反対のものに見えますが、どちらも他者を圧する力であり得ることには変わりません。
エース すべてのはじまり
雲から突き出した腕が、しっかりと無骨な剣を握りしめています。
この剣は装飾を排した、敵と戦うための実用的なものですが、その上には王冠とオリーブ、シダの葉が飾られています。これは勝利の象徴です。
この剣で容赦なく敵を切り裂き、勝利を手にするのです。
それは重く垂れ込め、背後に映る山脈は険しく、厳しい旅路が予想されますが、剣を取り巻く黄金のエネルギーと王冠は、勝利への強い意志を表しています。
知恵と力を振り絞り、敵を倒さなければ、その先の平和も得られないのです。
2 一歩を踏み出す
ここから先は通さない。
目隠しをして二本の長剣を構えた人物が、石の椅子に静かに座っています。
いったい何時から、その場にそうしているのでしょうか。
永遠にそのまま動かないのではないかと思わせるものが、この人物にはあります。
長剣を構える腕は胸の前で交差され、この場を堅く守り、絶対にこの先へは進ませないという意志を表しているように思えますが、にもかかわらず、この人物は目隠しをしています。
侵入者を見ないようにしているのです。
これはいったいどういう意味なのでしょうか?
通るも通らないも、あなた次第です。
3 広がりを求める
三本の剣がハートを貫いています。
剣は交差され、容易には引き抜けないように見えます。
背景の空は荒れ、冷たい雨が、剣の刺さったハートに降り注いでいます。この雨は、心を癒やす恵みの雨のようには見えません。傷ついた心をさらに冷やすような、冷たい雨です。
人生の中では何度も、「もう立ち直れない」と思うほど傷つくことがあるでしょう。
心を傷つける剣は自然には抜けず、自分で勇気をもって、痛みをこらえて引き抜くか、誰かが思いきって抜いてくれるまで、傷を癒やすこともできません。
まずは剣を引き抜かなければならないのです。
4 小休止
ステンドグラスと剣の飾られた壁。ここは恐らく教会か、騎士を弔う霊廟でしょう。
眠る騎士をかたどった棺の中では、彫像そっくりの騎士が永遠の眠りについているのでしょうか。
戦い続けた彼にとって、死は安息なのでしょうか。
待ってください。
棺の蓋はまだ閉められていないように見えませんか?
この棺の主となるべき人物は、まだ生きているのでは?
今はまだ、永遠の眠りにつくべき時ではないのかもしれません。
5 変化の兆し
どんな手段を使っても、勝ったものこそが勝者だ。
それはそうでしょう。勝てば官軍、歴史に刻まれるのは勝者の言い分で、敗者には弁明の機会さえ与えられないことがほとんどです。
勝つことは重要です。勝たなければ何もかないません。
では、勝ちさえすれば、勝ち方は問われないのでしょうか?
問われないかもしれませんが、忘れられることもないでしょう。
道理に反することや人の信頼を踏みにじるようなことをすれば、それらの結果は、いずれは何らかの形で、自分のもとに返ってきます。
ほくそ笑んでいられるのも、今のうちかもしれません。
6 ひとまずの達成
灰色の空が続いています。
これから向かう岸辺には目立つ建物もなく、華やかさはどこにも感じられません。
小舟に乗った親子はうなだれ、旅に出るというのに荷物の一つもありません。彼らは取るものも取りあえず、逃げていくのでしょうか。
逃げられることは幸運です。
小舟のこちら側の水面は荒立っていますが、これから進もうとしている側は、静かに凪いでいます。これはこれからの平穏を表しているのでしょう。
親子の前には彼らを守るように六本の剣が立ち、支援者なのか、今だけの船頭なのかはわかりませんが、彼らを対岸へ送り届けようとしている人物もいます。
彼らは少なくとも今は守られ、危険を避けることができたのです。
7 迷いが生じる
戦場から離れたところで、こっそりと武器をかすめ取っていく人物がいます。
こういう人物はどのような時代、組織、局面にも必ずいて、漁夫の利を得たり、焼け野原の土地にいつの間にか領地の囲いを作ったりしています。
彼らの中にはどこか憎めない人物もおり、なぜか悪事がばれても対した罪に問われなかったりもします。
この人物もそうなのでしょう。
やっている事は火事場泥棒だろうに、その表情はおどけて明るく、空も金色に輝いています。
何が善で何が悪なのかは、一瞬その場面を見ただけではわからないのかもしれません。
この人物が剣を盗んで行ったおかげで、死なずに済んだ人がいたかもしれませんね。
8 再び動き出す
目隠しをされ、体を縛られた人物が、八本の剣に囲まれています。
足下はジメジメと水が溜まり、歩き出すことをためらいたくなります。
ですが、よく見ると、体を縛る布は今にもずり落ちそうで、目隠しも緩く、隙間から足下が見えるのではないでしょうか?
周りを囲む剣も実は前方にはなく、この人物が歩き出すことに支障はありません。
そうなのです。実はこの人物は捕らわれてなどいません。
捕らわれている振りをしているか、捕らわれているつもりになって自らを哀れんでいるくらいのものでしょう。
真剣に生きているならば、いずれは目隠しと紐を解き、歩き出して行くはずです。
9 過去の蓄積
嘆き悲しんでいるのか、悪夢から覚めたばかりなのか。
この人物も前のカードに描かれた人物と似ています。
実は現実の状況は逼迫していないのに、精神が参ってしまっているのです。
この人物の横たわっていた寝台は華麗な彫刻が施され、豪華な布で覆われています。全く困窮などしていないのです。
それなのに、真っ黒い背景に浮かぶ九本の剣が今にも頭上から落ちてくるような気がして、この人物は悩み苦しんでいるのです。
もう悪夢から覚めたのですから、起き上がって美味しい朝食でも食べに行けば良いのです。
10 終着
そうこうしているうちに、現実に剣が頭上から降ってきてしまいました。
この人物は、十本の剣に背を突き刺され、なすべもなく地面に倒れ伏しています。
恐れているだけで何もしなければ、悪夢が現実になることもあるのかもしれません。悪夢から覚めたら、また悪夢が始まらないうちに行動を起こすべきなのでしょう。
明けない夜はないと言いますが、確かに夜は明けるでしょう。
十本もの剣に地面に釘付けにされている人物の後ろでも、夜明けの光が空を染めはじめています。
ですが、この人物の夜は明けません。夜のうちに死を迎えてしまったからです。夜明け前に世を去ってしまっては、地球が夜明けを迎えても、もう自分には関係がないのです。
ペイジ(若年者、未熟な人物)
剣を構えた若者が小さな丘に立っています。
空は青く、夏のような雲が浮かび、鳥が群れをなしています。遠くに山脈が見えていますが、それほど険しい山ではありません。
若者の鋭い目つきとは対照的に、背景は爽やかです。
ここは戦場ではなく、若者は修行中の身なのでしょう。まだ実践の厳しさに晒されてはいないのです。
ですが、若者の心は、その手にした剣のように研ぎ澄まされています。
その鋭さで、誰かを傷つけてしまうかもしれません。
ナイト(若い男性)
猪突猛進、勇猛果敢。
美しい鎧を纏い、白馬にまたがった騎士が剣を掲げ、突撃していきます。
姿形は白馬に乗った王子そのものですが、彼の精神は敵を殲滅することに向けて鍛えられています。彼の手にしている剣は装飾ではなく、実戦で使うためのものなのです。
彼の疾走する速度を表すように、雲は荒くたなびいています。荒れ地に生えた木は強風を受けて傾いていますが、彼はそれほどの強風をものともせず、自身が嵐のように駆け抜けていくのです。
騎士の目には前方の敵しか映っていませんが、彼の乗る馬は彼を横目で見ています。脇目も振らずに突撃した先は、本当に真の敵ですか?
クィーン(成熟した女性)
まっすぐに剣を持った女王が何かを指し示しています。
剣を掲げた姿は厳しく「正義」を思わせますが、彼女のマントには青空が描かれ、その下のドレスは優美な形で袖口には装飾も施されています。冠もどこか可愛らしい形です。
彼女の座る椅子にも天使の彫刻が施され、背もたれは美しいカーブを描き、決して無骨なものではありません。
背景には入道雲が昇り、一羽の鳥が飛んでいます。
彼女は剣だけの、力と知性だけで物事を図る、杓子定規な人物ではないのです。人の世の優雅さを愛し、その知性で真に情のある正義を知ることのできる人なのでしょう。
キング(成熟した男性)
剣を構えた王が、静かにこちらを見据えています。
彼の纏うマントには装飾もなく、玉座の背もたれは美しい彫刻が施されてはいますが、まっすぐに高くそびえ、厳めしい印象を強くしています。表情は静かで、それだけに間違ったことを許さないだろう冷徹さがうかがえます。
ですが、彼は冷たいだけの王ではないのでしょう。
彼の背景の空と地面を見るに、女王と同じ場所にいるのではないでしょうか。
そして、空の鳥は二羽に増えています。
誠実に向き合えば、彼は誰よりも強い味方になってくれるでしょう。